大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和40年(ヨ)2287号 判決 1968年11月26日

申請人

福島章

代理上

石野隆春

外一名

被申請人

日本液体運輸株式会社

代理人

山崎保一

主文

申請人が被申請人に対し労働契約上の権利を有することを仮に定める。

被申請人は申請人に対し金九〇万円並びに昭和四三年六月二六日以降申請人の復職に至るまで毎月二五日限り金四三、〇〇〇円の割合による金員の支払をせよ。

申請人のその余の申請を棄却する。

訴訟費用は被申請人の負担とする。

理由

一、二〈省略〉

三申請人の権利と保全の必要性

1  以上により、申請人はなお会社に対し雇傭関係に立つものというべきである。〈中略〉

従つて、会社が昭和四〇年九月一〇日以降申請人の提供する労務の受領を拒否していることは当事者間に争いがないから、申請人は賃金請求権を失わないものといわなければならない。

申請人の昭和四〇年六月、七月、八月の平均賃金が四四、〇九五円であること、賃金の支払期日が毎月二五日であることは当事者間に争いがないから、申請人は昭和四〇年九月一〇日以降毎月四三、一三四円(同日から本件口頭弁論終結時である昭和四三年七月一三日までに弁済期の到来した右賃金の合計額は約一四四万円となる)の賃金請求権を有していると認められる。

2  被申請人は昭和四〇年九月九日以降の三〇日分の賃金として四三、一一〇円を申請人に対し弁済のため供託したというが、会社が右金員を申請人に対し賃金として弁済の提供をしたことを認めるに足りる疎明がないから、右主張は採用できない。

3  弁論の全趣旨により、申請人は会社から得る賃金を唯一の収入源とする労働者であつて、その支払を得られないことにより生活が困難となつていることが窺われる。

被申請人は、申請人が昭和四〇年一一月一七日陸交通株式会社に運転手として雇傭されたというが、これを認めるに足りる疎明はない。

4  当裁判所は諸般の事情を考慮して申請人が被申請人に対し労働契約上の権利を有する地位を仮に定め、かつ申請人のため昭和四三年六月二五日までに弁済期の到来した賃金の内金九〇万円と同月二六日以降申請人が会社において現実に勤務できるまで毎月二五日限り金四三、〇〇〇円の支払を命ずる限度において仮処分命令を発するのが相当と考ええる。

四むすび

よつて、以上説明のとおり、主文記載の限度で申請人の申請を認容し、その余を棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九二条を適用し、主文のとおり判決する。(大塚正夫 宮本増 大前和俊)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例